【コラム】寄稿-仮想通貨の税金講座(3)仮想通貨税制の課題点と今後

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執筆者
藤村大生
株式会社Aerial Partnersビジネス開発部長
税理士・公認会計士

株式会社Aerial Partnersにて暗号資産投資家の確定申告サポート、暗号資産事業者に対する経理支援を行っており、暗号資産会計・税務の知見が深い。監査法人出身でデューデリジェンス、原価計算導入コンサルなどの業務を中心に従事。また、証券会社の監査チームの主査として、分別管理に関する検証業務を牽引。

導入

仮想通貨取引を行う人や、これから始めようか検討している人にとって、税制は気になる点のひとつだと思います。仮想通貨取引による所得は雑所得に区分され、最大で約55%の税率がかかることから(住民税を含む)、FXや株式投資などにかかる税金と比較して不利と評価されることが多いのも事実です。

今回は仮想通貨税制の課題点と今後の展望を解説していきます。


仮想通貨税制の課題と今後

仮想通貨税制は、FXや株式など他の金融商品と比較すると、申告者・納税者に対して大きな負担を課していると評価されることがあります。本記事では、(1)総合課税と申告分離課税、(2)損益通算・繰越控除、(3)少額非課税、という3点に焦点を当てて、現在の税制の課題点と、今後の展望について見ていきます。


総合課税と分離課税

仮想通貨の取引によって生じる所得は、所得税額を計算する際に、給与等の一般的な所得と合算されます。この方式を「総合課税」方式と呼びます。この方式のため、仮想通貨による所得は一般的な累進税率の適用対象となっており、住民税とあわせると最大約55%の税率が掛けられることになります。ただし、例えば課税所得が500万円の場合の税率は約30%(住民税を含む)となり全ての方に55%が適用されるわけではなく、所得額によっては税率はさらに低くなるケースもあります。このように、個人の所得状況によって税率が変わる仕組みとなっています。

その一方で、株式やFX取引によって生じた所得は、租税特別措置法の規定により、他の所得とは区分して課税対象とされます。この方式を「分離課税」方式と呼びます。さらに特別な税率が適用されることになっており、住民税と併せても約20%の税率しか掛かりません。つまり、仮想通貨と株式・FXでは、他の所得との合算の有無・税率の点で、特に大きな違いがあるということです。

一般社団法人日本暗号資産(仮想通貨)交換業協会(JVCEA)などの業界団体からは税制改正の要望がなされており、今後は仮想通貨の現物取引・デリバティブ取引についても、分離課税制度の対象とする税制改正が期待されます。


損益通算・繰越控除

仮想通貨の取引で生じた損失は、他の事業などで得られた利益や、翌年度の取引で生じる利益と相殺処理することはできません

その一方で、株式やFXの取引で生じた損失は、一定の範囲ではありますが、このような相殺処理が認められています。他の所得と相殺処理する制度を「損益通算」、翌年度以降の所得と相殺処理する制度を「繰越控除」と呼びますが、株式・FX取引にはこれらが採用されている、ということです。

つまり仮想通貨の取引では、損失が生じたときには納税義務は軽減されず、利益が出たときには過去の損失・その他の所得の損失から納税額を軽減できない、という税制となっています。仮想通貨税制にも損益通算・繰越控除を導入する改正が期待されます。


少額非課税の導入

例えばDeCurretの「電子マネーチャージ」サービスを利用するなど、少額でも仮想通貨を用いて取引をすると、そのすべてが課税対象となります。

仮想通貨で電子マネーをチャージする場合、[仮想通貨を日本円に交換]→[日本円を電子マネーに交換]という取引と同様の扱いとなります。そのため、仮想通貨を日本円に交換するタイミングで利益が発生し、課税対象となる場合があります。

利益額の計算方法
チャージ時の仮想通貨の時価 ー 仮想通貨の取得原価 = 所得額

これは利用者にとって、毎回損益計算が必要になる点で不便であるばかりか、国税当局としてもすべての課税取引を追跡することは非常に難しいと思われます。
この解決策として提案されているのが、「少額非課税」制度です。一定額以下の仮想通貨取引については、政策的に課税対象から除外し非課税とすることによって、仮想通貨取引の利用を促しつつ、徴税コストを下げるという狙いがあり、導入が期待されます。


コラム:無申告者に対する税務調査の取締りが厳しくなる!?

上記のように仮想通貨税制改正の動きがある一方で、徴税を司る国税庁としてはまずは適正な納税を促進することが求められます。そのため国税庁では、納税率や税務調査の実効性を向上させる取組が進んでいます。

2019年6月には、仮想通貨取引について、全国で総額約100億円の申告漏れを国税庁が指摘したと、朝日新聞デジタルが報じています。多額の申告漏れを背景に、仮想通貨取引に対する課税庁の取締りが強化されていくと思われます。

その動きの1つとして、令和元年度改正において、仮想通貨交換業者に対する情報照会手続が整備されます。これは、仮想通貨取引所を運営する事業者などに対して、課税庁が協力要請を行うほか、特に必要があるときには報告を求めることができる仕組みとされており、取引所に保存されている取引データを用いた申告漏れの摘発に利用されると考えられます。

仮想通貨利用者としては、正確な損益を把握した上で申告を行うことが求められています。正しく損益を把握するためには、Gtaxなどの損益計算ソフト等を用いて計算するか、税務の専門家に計算を依頼するなどして、申告漏れがないように確実に対応しましょう。


まとめ

仮想通貨の取引では、株式・FXの取引とは異なり、分離課税方式や損益通算・繰越控除制度が適用されません。こうした点について、業界団体を中心に、税制改正に関する要望が提出され、今後の税制改正が期待されています。

また、国税庁も申告漏れには厳格な姿勢を見せており、適切な納税を促す手続きの整備に動き始めています。仮想通貨利用者1人1人が、適正に確定申告・納税を行っていくことが求められます。


※本記事は、エアリアルパートナーズ様による寄稿記事となります。本文にかかわる諸事項につきましては、下記のお問い合わせ窓口、もしくは税理士等の専門家にお問い合わせください。

株式会社Aerial Partnersが提供する仮想通貨の確定申告サポートサービス

仮想通貨の損益計算ソフトGtax
https://crypto-city.net/

仮想通貨の確定申告フルサポートサービスGuardian
https://www.aerial-p.com/guardian/